どっちでもいい言葉をどう選ぶか?~『声に出したくなる⁉音象徴の世界』から考える~
はじめに
類義語はどう選ぶべきか。
「発表」と「布告」であれば、類義語辞典を見れば一発だ。
だが、困った言葉があった。
それは「ながら」と「つつ」。
辞書を見ても違いが書いてない。
正直、どっちでもいいと思う。
それでも、何らかの指標を持っておきたい。
そんなことを考えてネットをぶらついていた所、1つのブログに出会った。
それが『声に出したくなる!?音象徴の世界』(※)だ。
内容は、音が人に特定のイメージを引き起こす現象「音象徴」を紹介するもの。
「ながら」と「つつ」をどう対処すべきか。
「音象徴」を手掛かりに見ていこう。
(※)日本化学未来館、化学コミュニケーターブログ
https://blog.miraikan.jst.go.jp/articles/20191224post-104.html
ながらとつつの違い
まずは、音から2単語を見てみる。
・ながら(nagara)
①母音:全部、母音が「ア」
②子音:最初から、ナ行、ア行、ラ行
③濁音:がという濁音が含まれる
・つつ(tutu)
①母音:全部、母音が「ウ」
②子音:最初から、タ行、タ行
③濁音:濁音が含まれない
こう見ると、かなり違う。
ここからは①~③の順番で、違いを確認していく。
①:母音
同ブログによると、母音(a,i,u,e,o)には、音の大きさに違いがある。
これは母音によって、より「大きいと感じやすい」、または「小さいと感じやすい」ということだ。
大きさ順で並べると、
あ、お>え>う>い
(論文によっては「あ」の方が「お」より大きいと言われていますが、他の母音に比べて「あ」と「お」では明確な大きさの違いはないとされています。)
という。
「ながら」と「つつ」を見ると
「ながら」は、”全部、母音が「ア」”
→もっとも大きい(と感じる)母音で構成
「つつ」は、”全部、母音が「ウ」”
→2番目に小さい(と感じる)母音で構成
②:子音
子音は阻害音と共鳴音の2種類に分かれるという。
阻害音は、濁音にできる音と濁音、半濁音。
→カ行、サ行、タ行、ハ行、ガ行、ザ行、ダ行、バ行、パ行
共鳴音は、濁音にできない音
→ナ行、マ行、ヤ行、ラ行、ワ行
2つの違いについて同ブログは、
音象徴では、阻害音は「角ばった」や「近寄りがたい」イメージになり、共鳴音は「丸っこい」や「親しみやすい」イメージにつながると考えられています。
と説明する。
では、「ながら」と「つつ」を見よう。
「ながら」は、”最初から、ナ行、ア行、ラ行”
→母音だけのア行は別として、他は「親しみやすい」共鳴音
「つつ」は、”最初から、タ行、タ行”
→すべて「近寄りがたい」阻害音
③:濁音
濁音については、
「大きい」「重い」「強い」といったイメージを与える
という。
「ながら」は”がという濁音が含まれる”
→「大きい」「重い」「強い」音が含まれる
「つつ」は”濁音が含まれない”
→特に、「大きい」「重い」「強い」音がない
まとめ
まずは、①から③の比較で分かった「ながら」「つつ」の違いをまとめる。
・ながら(nagara)
①もっとも大きい(と感じる)母音で構成
②母音だけのア行は別として、他は「親しみやすい」共鳴音
③「大きい」「重い」「強い」音が含まれる
・つつ(tutu)
①2番目に小さい(と感じる)母音で構成
②すべて「近寄りがたい」阻害音
③特に、「大きい」「重い」「強い」音がない
改めて、こう見るとかなり違う。
「ながら」は、くだけた文章とか、使用位置を強調したい場合とかに使えばいいんじゃないか。
一方、「つつ」は、固めの文章とか、大して重要じゃない箇所に使えばいいんじゃないか。
知らんけど。