そろそろ「」をうまく使いたい
はじめに
セリフを入れる「」
つなぎの部分をどうするかいっつも迷う。
あげく時間が無くなって、「」と語ったを繰り返す羽目になる。
カッコ悪いし歯がゆくて頭を抱えている。
今まで読んできた文章の書き方とか文法解説書にも、「」をうまく文章に入れる方法なんて書いてない。
自分でやるしかないと思った。
そこで、11月19日の朝日新聞から「」使ってる箇所を探してパターン分けしたい。
パターン分けの方法は、話し手を「」から見て、どこに置くかによって区分しようと思う。
早速見ていこう
- パターン① 「」の前に話し手を明示する
- パターン② 話し手を直前の文に持ってくる
- パターン③ 「」の後に話し手を示す
- パターン④ 話し手を直後の文に持ってくる
- パターン⑤ 話し手が段落をまたぐ
- パターン⑥ 話し手を「」内に入れる
- パターン⑦ 見出しに話し手を明示する
- おわりに
パターン① 「」の前に話し手を明示する
一番シンプルなパターン。●は「」と語った、とかのパターン。
分かりやすくていいが、こればっかになって困る。
政治資金に詳しい神戸学院大の上脇博之教授は「政治家が(中略)見えてこなかったデータだ」と話している。
退避した男性医師は、午前9時ごろ1時間以内での対比を通告されたとし、「我々は非難を強制された」と説明した。
また、意見を語った後に「、」を置いて一息付けて、事実を地の文にするやり方もある。
林氏も取材に「法令に従い適正に処理し、その収支を報告している」とし、品物や贈り先については答えなかった。
見ていると、話し手が強く見える。誰が言ったかが重要。
こんなのもある。
見舞いに来た医師であるおいに「こんなに眠れるものなのか」と聞くと、「元気になるために眠れます」と答えた。
変わった書き方だが、会話の中に話し手を入れるパターン。すっとこういうのが書けたらかっこいいし、憧れる。
パターン② 話し手を直前の文に持ってくる
●は言った。「」のパターン
ベテラン議員は言う。「何と言われようが池田先生が支柱であったことは間違いない。選挙戦への影響はある」
こうすると、話し手と「」が両方重要であると分かる。パターン①は、話し手が強い印象があったが、『。』1つ入れるだけでこんなに印象が違う。
こういうのもある。
地元の方によれば、暑さが続いたためか、一帯は例年とは少し様子が違うそうだ。「いつもならこの木はもう盛りのはずですが、今年は遅いようで」。染まりきる前に落ちてしまう葉もある、と残念がっていた。
話し手の『地元の方』も「」内も重要ではない。
言いたいのは、『一帯は例年とは少し様子が違う』である。
『、』の使い方がうまいと思う。
以下の例を見ると感想を言う時にも使いやすいのではないか。
女性初の首相の座につき、その成果は本当にすごかった。「私に後戻りはない」と、信念がぶれない強い政治家であった。
パターン③ 「」の後に話し手を示す
話し手が「」の後に来るパターンこういうの。
贈り物はどう渡されるのか。「多くは国会議員への贈り物だ」と与党議員のベテラン秘書は話す。
「」が強くなる。そこまで話し手は重要じゃない。「」に説得力を持たせるための材料。
パターン④ 話し手を直後の文に持ってくる
パターン③よりももっと話し手がどうでも良くなる。
「娘は軍に捨てられました」。12日、イスラエル中部クファル・サバにある軍の墓地で営まれたロニ・エシェルさん(19)の葬儀で、母シャロンさんが涙ながらに訴えた。
内容が内容なのでいたたまれないが、別に母でも父でも叔父でも何でもいい。
この使い方は、記事の冒頭に多かった。引きの役割に使えるんだと思う
パターン⑤ 話し手が段落をまたぐ
次に示すのは高等技術。急いでるときとかにやっていいものじゃない。
与党議員のベテラン秘書は話す。(中略)。
自身が使える議員が入閣した際のお祝いとして、同僚議員から商品券やビール券をもらったこともあるといい、「昔からの習慣で、もらうからには返さないと、と続いてきた。例を失することによる失点を防ぐためだ」という。
別の与党議員の秘書は...
ポイントは、最後に『別の与党議員の秘書は』があること。
疲れた人間が読んでいたとしても、次の段落の冒頭で前の発言が誰か分かるようになっている。
以下は、「」内を物凄く強調するために使っている。
心理士からこう言われた。
「『男はこうあるべきだ』にがんじがらめになっていますね。つらくないですか?」
結婚を望んだ女性と別れたと(以下略)
若干くどくも感じるが、「」内に『』を入れて、さらに強調している。書き手が記事のイメージをしっかり描いていないと、こうはならない。
パターン⑥ 話し手を「」内に入れる
こんなの。
(記事冒頭)「取締役会は、オープンAIを主導し続けるための彼の能力に自信が持てなくなった」
あまり見ないし、使いどころも少なそう。ただし、「当店はラーメンが自慢です」など話し手が強調したいことを示すために使える。
また、パターン③(「」の後に話し手を示す)との合わせ技もある。
会社の方向性をめぐる幹部らの意見対立があったようだ。
「サムと私は、取締役会が今日やったことに驚き、悲しんでいる」。ブロックマン氏は17日夜、Xにそう投稿した。
ここまで来ると、翻訳以外に用途がないんじゃないかなあ。
パターン⑦ 見出しに話し手を明示する
インタビュー記事など、登場人物が1人の時に使えるもの。ここまで来ると、記事の体裁によって使えるかが変わってくる。さらに、見出しにするほど話し手が重要でなくちゃいけない。
(見出し)ホスピスで2500人めとった柏木哲夫さん
「先生、やっぱり死ぬのは怖い」回診中に患者から言われた。ホスピスでも「死」という言葉を患者から発することはあまりない。「ああ、そうでしょうね」としか答えなかった。
このほかの部分でも、「」内が見出しの時点で話し手が決まってるから、好きに「」を入れられる。見出しで話し手を固定すると、書き手は楽しいんじゃないかな。
おわりに
「」と話し手の位置から、「」を区分してみたら、なんと7パターンもあった。
正直びっくりしている。
これを日々のライティングにどう活かすか。
とりあえず、話し手と「」の内容のどっちを強調したいかを頭に入れておけばいいんじゃないかな。
あとは、同じパターンが続きすぎて他のを使いたいときとか。